スタイルとチームワーク|リミット33話

 九回表、ショート神山(かみやま)の代打で出た白城(しらき)はレフトへ入った。本人いわく、プロの強打者はレフトが多い!だそうだ。そして、レフトの小山田(おやまだ)がショートへ移る。


 白城(しらき)の同点満塁ホームランで、試合は16対16。梯(かけはし)高校の攻撃は、六番の三好(みよし)から始まる。

 

「いっくぜー!三好(みよし)」


 勢いよく投げた一奥(いちおく)は、三好(みよし)の予想外の構えに驚きながら前へダッシュした。


「セーフティかよ!」


 完全に出遅れた一奥(いちおく)。三塁線に転がったボールを懸命に追うが、三好(みよし)の足がグングン加速する。


(バントならタイミングは関係ないんだよ!一奥(いちおく))


「あのヤロウ、ホームラン捨てやがった!」

「任せろ一奥(いちおく)!」


 サードの村石(むらいし)が猛然とダッシュ。だが村石(むらいし)は元々キャッチャーの選手。バッティングを買われての起用だけに、サードの守備には慣れていない。それでも一奥(いちおく)は足を止め、村石(むらいし)にボールを任せた。


「うりゃー!」

「セーフ」


「くっそー!」


 セーフになった三好(みよし)とサード村石(むらいし)が同時に悔しがった。ファーストの杉浦(すぎうら)は、三好(みよし)の気持ちがわかった。


「今日の所は、試合の為に一奥(いちおく)を認めたのか」

「あ?まぁ、悔しいけど今の俺には打てねぇ球だ。でも、試合には負けたくねぇ」


「フン。だがお前、悪くはないぞ」


 杉浦(すぎうら)が、マウンドへ戻った一奥(いちおく)へ返球。そこへ、タイムをかけた遠矢(とうや)が走って来た。


「一奥(いちおく)、九条(くじょう)以外はまだ見切れてない。だから、次の六川(ろくがわ)も狙ってくるかもしれないよ」

「どうやらそのようだな。いいぜ、今度はアウトにしてやる!」


 すると遠矢(とうや)は、セカンドの仟(かしら)を見て閃いたように頷いた。それに気づいた一奥(いちおく)は、(まさかな……)と思った。


「一奥(いちおく)」
「本気か?遠矢(とうや)!」


「やっぱりそう思う?う~ん仟(かしら)は怒るかな?」

「失敗すれば、怒ると思うけどな……」


「そうだね。じゃ、頼むよ!」

「結局やるのかよ。……まぁいいけどさ」


 遠矢(とうや)は仟(かしら)との対決で、リードをパクった。いいプレーのマネが得意な遠矢(とうや)は、嬉しそうにホームへ戻っていった。


「さぁ来い!一奥(いちおく)」

「いい気合いだぜ!六川(ろくがわ)。打てるもんなら……打ってみな!」 

「なにっ?」


 投球と同時にセーフティバントの構えをした六川(ろくがわ)は、思わず声を出した。山なりのスローボールを投げた一奥(いちおく)は、二塁ベースを目指す。


 その姿を見た六川(ろくがわ)は、ニヤリと笑った。


「バカめ!マウンドががら空きだぜ!」


 ピッチャー正面に転がす六川(ろくがわ)。しかしボールが転がったのを確認した瞬間、顔色が変わった。


「キャッチャーだとぉ!」

「一奥(いちおく)!しゃがめー!」


 遠矢(とうや)がすばやく二塁へ送球。


「うおっ!」 


 しゃがんだ一奥(いちおく)が驚いた瞬間、ショート小山田(おやまだ)が捕ろうとしたボールが消えた。

 ボールは、グローブを出してしまった一奥(いちおく)が持っていた。すぐに小山田(おやまだ)が異変に気づく。


「一奥(いちおく)君、早く!」


 だが、「あ!」と叫んだ一奥(いちおく)は、グローブにボールが挟まっている事に気づいた。


 一奥(いちおく)がもたつく間に、一塁ランナーの三好(みよし)はセーフのタイミングになってしまった。


 ショートの小山田(おやまだ)は、「くっ、ファースト、ファースト!」と一奥(いちおく)に叫ぶが、グローブに挟まったボールがまだ取れない。


「くっそぉー!」


 ボールを外す事を諦めた一奥(いちおく)は、グローブごとオーバースローでファーストの杉浦(すぎうら)に投げつけた。


 杉浦(すぎうら)はファーストミットで取らず、両腕で一奥(いちおく)のグローブを抱え込んだ。


(よし!アウトだ)

「セーフ」

「なにぃ?」


 間に合ったと喜んだファーストの杉浦(すぎうら)が驚く。タイミングは完全にアウトだった。だが審判はセーフ。


 すると杉浦(すぎうら)の目に、一塁線方向へ走る遠矢(とうや)の姿が映った。


 ボールは、一奥(いちおく)がグローブごと投げた勢いで上に飛び出し、一塁ベンチ方向へ転がっていた。それを見た一塁ランナーの三好(みよし)は、一気に三塁を狙う。


「遠矢(とうや)!サードだ!」


 ファーストの杉浦(すぎうら)が、一奥(いちおく)のグローブに怒りをぶつけるように投げ捨てながら叫んだ。


 素早くボールを拾った遠矢(とうや)のストライク送球が、サード村石(むらいし)のグローブに収まる。


「セーフ」


「よっしゃー!」
「六川(ろくがわ)ー!ヒヤヒヤさせんじゃねぇ!」
「一奥(いちおく)!ナイスプレー!」


 一奥(いちおく)の珍プレーに、盛り上がる梯(かけはし)ベンチ。一奥(いちおく)はズボンの砂を手ではらい、杉浦(すぎうら)の下へ歩き出した。


「遠矢(とうや)の奴、スゲェ球投げやがった。つい手がでちまった……杉浦(すぎうら)先輩!俺のグローブ……って、あれ?」


 一奥(いちおく)が、グローブを持たない杉浦(すぎうら)に気づく。目が合った二人の間に僅かな沈黙が訪れ、思い出したかのように杉浦(すぎうら)が「おぉー!」と声を上げた。


「おぉー!じゃねぇよ。俺のグローブどこ行ったの?」

「知らん……」
「はぁ?」


 困った顔の一奥(いちおく)に、側にいたセカンドの仟(かしら)が声をかけた。


「一奥(いちおく)さん……あそこです」

「仟(かしら)?えー?」


 仟がありえないといった表情で指差した場所に、一奥(いちおく)は驚いた。それは、ライト側にある道具倉庫だった。


 怒った杉浦(すぎうら)が思わず投げた一奥(いちおく)のグローブは、推定飛距離50メートルのファールフェンス越え倉庫直撃のビッグスローだった。


 走り出した一奥(いちおく)はヒョイっとフェンスを越え、グローブを拾ってファースト杉浦(すぎうら)の下へ戻ってきた。


「杉浦(すぎうら)先輩……」

「な、なんだ……」


「ありえねぇーだろ!」

「ガハハ!よく飛んだな」


「ったく……」


 呆れた一奥(いちおく)がマウンドへ戻ると、遠矢(とうや)がボールを両手で回すようにキュキュッと握っていた。その視線は、スコアボードに向けられていた。


「遠矢(とうや)、スコアボード見て計算でもしてたのか?この回、何点取られそうだ?」

「もちろんゼロだよ。ただね……」


「ただ?」

「九条(くじょう)に回す事を、彼らは最優先に考えてるね」


「九条(くじょう)か。もし回ればあいつらの勝ち。回らなければ、西島(おれたち)の勝ちか……」

「どうする?一奥(いちおく)。九条(くじょう)に回すかい?」


 遠矢(とうや)は、微笑みながら言った。


「そうだな……。野球バカが見たい方になるんじゃねぇかな?」


 そう言った一奥(いちおく)が見上げた先は、ライトスタンド後方にそびえ立つ校舎の屋上だった。


 そこに立っていたのは、西島(にしじま)理事長だった。


「なるほどね。ほいっ、ボール」

「っと。じゃあ遠矢(とうや)、俺たちも見てみるか」


「そうだね。もう僕の計算を越えてるし、それで行こう」


 遠矢(とうや)が振り返ると、バッターボックスにはすでに八番の四本(よつもと)が立っていた。


(この回に限っては、スクイズも考えられる。一塁ランナーのみを走らせるセーフティも……やっぱりやるしかないかな)


 再び遠矢(とうや)が振り返る。すると、センターの要(かなめ)をマウンドへ呼んだ。


「どうしたの?」

「ストップストップ!要(かなめ)、そこでいいよ」

「了解しましたぁ!」


 要(かなめ)は、マウンドの右斜め後方に立った。しかし、遠矢(とうや)の大胆なシフトはこれだけではなかった。


「仟(かしら)!前、前」

「私もですか?」


 仟(かしら)は、要(かなめ)と反対方向に位置した。さらに遠矢(とうや)はショートの小山田(おやまだ)を二塁ベース付近へ移動させ、レフトの白城(しらき)とライトの鶴岡(つるおか)を、三遊間後方と一・二塁間後方に、それぞれ移動させた。


(一奥(いちおく)のストレートなら、打てば先っぽかつまる。外野には行かない。これでいい……)


「遠矢(とうや)、スゲェシフトだな」

「まだだよ?一奥(いちおく)」


「へ?」


 ホームへ戻った遠矢(とうや)のサインを一奥(いちおく)が目にする。それは、敬遠のサインだった。

土壇場でのアクシデント

 八番四本(よつもと)を歩かせ、場面はノーアウト満塁。超前進守備の西島(せいとう)ナインが迎えるは、九番ピッチャーの松原(まつばら)。


 ネクストから様子を見ていた松原(まつばら)は、打席に入るのをためらっていた。


(これでは、どうする事も出来ない!下手を打てばトリプルプレー。バントをしてもダブルプレー……)


 迷った松原(まつばら)の選択は、見逃し三振。後続に託し、悔しそうにベンチへ歩き出した。


「くそっ」


 そこへ、ネクストの一番五十嵐(いがらし)が来た。


「松原(まつばら)、いい判断だった。後は任せろ!」

「あぁ」


 そして、五十嵐(いがらし)が打席に立つ。


「おい、キャッチャー。守備位置はこのままでいいのか?」

「自信がありそうだね」


「自信がないなら、ここに立ってねぇけどな」


 初球、五十嵐(いがらし)はバントの構えをした。スクイズを警戒し、仟(かしら)と要(かなめ)がダッシュする。


「ストライク」


 五十嵐(いがらし)はバットを引き、守備陣の動きを確認した。


(バントの構えで動いたのは、かわいこちゃんの二人。にしても素早いなぁ……どうする?)


 五十嵐(いがらし)が迷う中、一奥(いちおく)が二球目を投げた。


(インコース!それなら……) 「フルスイングだぁ!」


 五十嵐(いがらし)が強振!しかしタイミングが合わず、「くっ……」とつまらされた。打球はファースト後方のファールフライ。


 ファーストの杉浦(すぎうら)とライトの鶴岡(つるおか)が打球を追う。杉浦(すぎうら)が「俺だ!」と声をかけ、捕球体勢に入ったその時だった。


「おぉ?」


 バックで追っていた杉浦(すぎうら)は、ドスーンと尻もちをついた。だか打球は座ったままキャッチした。


(まさか転ぶとは。だがボールは捕った。危なかったぞ)


 杉浦(すぎうら)がファーストミットに収まったボールにニヤついた瞬間だった。


「バックホームだ!」


 サードの村石(むらいし)が叫んだ。「なにっ?」と、杉浦(すぎうら)は三塁ランナーの三好(みよし)を確認。


(もらった!)
と、一直線にホームへ突っ込む三好(みよし)。


 杉浦(すぎうら)のカバーにいたライトの鶴岡(つるおか)が、座っている杉浦(すぎうら)のファーストミットからボールを掴んだ。


「俺が刺す!」 (元エースの肩をナメるな!)


 鶴岡(つるおか)、懸命のバックホーム。タイミングは微妙。三好(みよし)は足から真っ直ぐホームへスライディングした。


(セーフだ!)


 三好(みよし)と遠矢(とうや)が主審を見上げる。


「アウト!チェンジ」


「うおぉぉぉ!」
「守ったぜ!」
「これで負けはなくなった!」


 喜びに西島(せいとう)ベンチが騒ぐ。だが、遠矢(とうや)の様子がおかしい。ミットを外し、左手で右手を押さえていた。すぐに一奥(いちおく)が駆け寄る。


「大丈夫か!遠矢(とうや)」

「いてて。ちょっと指を切っただけだよ」


 タッチにいった際、遠矢(とうや)は三好(みよし)のスパイクで右手の小指を怪我してしまった。


「すまん……大丈夫か?」


 ランナーの三好(みよし)も、遠矢(とうや)を心配した。


「プレー中に怪我は付き物だからね。気にしないでよ」


 すると、紀香(のりか)監督が救急箱を持って遠矢(とうや)の下へ走ってきた。


「遠矢(とうや)!見せなさい」


 左手で傷口を押さえていた遠矢(とうや)が手を離すと、左手は血まみれだった。紀香(のりか)監督はすぐに消毒し、ガーゼで止血に入る。


「血が止まるまで、押さえていなさい」

「すみません、監督。ありがとうございます」


 応急処置も終わり、西島(せいとう)ナインはベンチへ戻った。


 九回の裏、先頭は七番の小山田(おやまだ)から。小山田(おやまだ)がバッターボックスへ向かおうとしたその時、ネクストの遠矢(とうや)は仟(かしら)に新たなガーゼと包帯を頼んだ。


「仟(かしら)、もっときつく巻いて」

「はい」


 包帯を巻いている間、仟(かしら)は嫌な予感がした。


「遠矢(とうや)さん!まさか打席に立つつもりですか?」

「試合が終わったら、病院に行くよ……」
「答えになっていません!」


 仟(かしら)は怒りながら涙を流した。


「仟(かしら)……」

「包帯は巻きます。でも交代して下さい。私たちがサヨナラにしますから」


 遠矢(とうや)からの返事はない。だが遠矢(とうや)は、マウンドで投球練習をする松原(まつばら)をジッと見ていた。それを見た一奥(いちおく)が、二人の前に立った。


「仟(かしら)、遠矢(とうや)を止めても無駄だぜ」

「一奥(いちおく)さん……私にはわかりません。どうして止めないのですか?縫うほどの怪我ですよ?本当なら、すぐに病院に行かないと!」


 黙っていた紀香(のりか)監督は、わかっていなから様子を見ていた。感情的になった仟(かしら)の頭を、よしよしと要(かなめ)が撫でる。


 それでも仟(かしら)は納得できない。止血の為に包帯を巻いてはいるが、表情はさえない。すると遠矢(とうや)が呟いた。


「この試合は最後まで出たいんだ……頼むよ仟(かしら)」


 仟は遠矢(とうや)と目を合わせた。一息つくと、無言でまた遠矢(とうや)の包帯を再び巻き始めた。


「わかりました。遠矢(とうや)さんは三振してきて下さい。一奥(いちおく)さんが決めますから」

「お、俺か?」


 仟(かしら)は、自分が遠矢(とうや)の立場でも同じことをしただろうと思った。落ち着きを取り戻した仟(かしら)は、要(かなめ)に「ありがとう」と言う。
すると、一奥(いちおく)が考えるように言った。


「なぁ仟(かしら)。俺、松原(まつばら)打てる気しないんだけど……」

「そうですよね……」


「だろ?」


 すると、仟(かしら)の隣に座る要(かなめ)が立ち上がった。


「それなら一奥(いちおく)ん。私に回してくれればいいよ?」


「そうか!くのいち打法の進化バージョンか!」
「ないない」


「ねぇのかよ……」

「でも、仟(かしら)に回せばいいでしょ?」


「おぉー!それだ!サヨナラが見えてきたぜ」


 はしゃぐ一奥(いちおく)と要(かなめ)。しかし仟(かしら)は冷静に答えた。


「私も難しいです。それなら繋ぎます」


「ちょっと待て!俺まで回すつもりか?」


 驚いた白城(しらき)だが、次の瞬間やる気になっていた。


「まぁいいか。お前らが回せるなら、俺が決めてやる」

「いや白城(しらき)、俺が決める」


 白城(しらき)が「え?」と杉浦(すぎうら)を見ると、すぐに一奥(いちおく)がツッコんだ。


「ちょっと待て。杉浦(すぎうら)先輩」

「うるさいぞ一奥(いちおく)。遠矢(とうや)の怪我は俺のせいだ。借りは返す」


「それはそうかもしれないけどさ、絶対に無理なんだよ」

「ん?なんでだ?」


「いや……杉浦(すぎうら)先輩に回る前に、ど~考えてもサヨナラになっちゃうんだよ」


「なに?ツーアウト満塁の打席は誰だ」

「それが白城(しらき)なんだよ」


「ならなんだ!俺はもうこの試合は終わりか?」


 杉浦(すぎうら)が勢いよく立ち上がる。その迫力に、一奥(いちおく)は一歩下がった。


「……だな。だから後は応援……そうだ!小山田(おやまだ)先輩は?」


 一奥(いちおく)がホームを見ると、小山田(おやまだ)は遠矢(とうや)の治療の時間稼ぎをしていた。現在、カウントはツーツー。


 すると、得意気な白城(しらき)の声が一奥(いちおく)の耳に入った。


「あいつはミートの天才だ。当てるだけなら粘れるさ」

「粘れるって白城(しらき)。お前よりもか?」


「まぁな。小山田(あいつ)は真面目で遠慮しがち、さらに照れ屋で大人しいけどな。試合での闘志はスゲェんだよ」


「ファール」


 白城の言う通り、小山田(おやまだ)は必死に食らいついていた。


(遠矢(とうや)君は出るつもり。それまでは僕が一球でも……)

(粘るな……だが、なんとしても引き分けにする)


 小山田(おやまだ)とキャッチャー九条(くじょう)の我慢比べが続いていた。


 だが、遠矢(とうや)がネクストバッターズサークルへと歩く姿を見た瞬間、小山田(おやまだ)の集中力が切れてしまった。


「ストライクバッターアウト!」


(くそっ)


 空振り三振。下を向いた小山田(おやまだ)がベンチへ下がる途中、ずっと見ていたネクストの遠矢(とうや)が側にきた。



「小山田(おやまだ)さん、いい粘りでした。でも僕は三振しないと後が怖いので、先に謝っておきます」

「遠矢(とうや)君……」


 この時、小山田(おやまだ)は遠矢(とうや)の言葉に違和感を覚えた。


(なんとなくだけど……遠矢(とうや)君の目が先を見ている気がした……)


 ベンチへ戻ると、白城(しらき)が笑顔で小山田(おやまだ)を迎えた。


「惜しかったな」

「白城(しらき)……」


 返事をした小山田(おやまだ)は、振り向いて遠矢(とうや)をジッと見ていた。


「あいつは三振だ。俺たちはツーアウトから行く」


 白城(しらき)の声に、再び小山田(おやまだ)は振り向いた。その瞬間だった。 


 キン「ファール」


 グラウンドに響いた金属音に、白城(しらき)は眉間にシワを寄せた。ベンチがにわかにざわつく中、叫んだのは仟(かしら)だった。


「遠矢(とうや)さん!」